「棒倒し」のように崩れていく筋肉の働き
体の不調を説明する際に「棒倒し」というゲームに例えると、患者さんにもイメージしやすくなります。棒倒しでは、土台となる棒が抜け落ちると、残された棒に過度な負担がかかり、全体が一気に崩れてしまいます。私たちの体の筋肉も同じです。本来は複数の筋肉がバランスよく働き合い、関節や骨格を支えています。しかし一部の筋肉が「働けない状態」に陥ると、残りの筋肉に過剰な負担がかかり、痛みや不調が現れるのです。
筋肉が「働けない状態」とは何か
単に筋力が落ちている、という表現では片付けられません。筋肉は神経からの電気信号によって収縮し、関節を動かします。その接点が「神経筋接合部(エンドシナプス)」と呼ばれる場所です。ここが疲労やストレス、繰り返しの負荷によって情報伝達が滞ると、筋肉は十分な力を発揮できなくなります。つまり筋肉の繊維そのものが壊れていなくても、「信号が届かないために動けない」状態が起こりうるのです。
このとき、残された筋肉が無理をして働くようになり、その部位には過剰な緊張や血流障害が生まれます。硬直した筋肉は乳酸などの代謝産物を溜め込みやすくなり、痛み物質(ブラジキニンやプロスタグランジンなど)が神経を刺激します。これが「肩こり」や「腰痛」といった自覚症状として現れてきます。
「負のスパイラル」に陥る仕組み
筋肉の一部が働かないと、残りの筋肉に負担が集中します。その結果、次第に別の筋肉も機能低下を起こし、さらに新たな不調を引き起こします。これは棒倒しの棒が次々と抜けていく状態に例えることができます。やがて全身のバランスが崩れ、姿勢の歪み、慢性的な疲労、関節の不安定性へと広がっていきます。この悪循環を医学的には「代償動作」と呼び、本人の自覚がないままに進行するのが特徴です。
神経筋整復法による回復アプローチ
当院で行っている「神経筋整復法」は、この「働けない筋肉」を再び目覚めさせることを目的としています。特徴的なのは、患者さん自身に抵抗動作をさせず、施術者の誘導によって神経と筋肉の連携を回復させる点です。筋肉の奥にある感覚受容器を適切に刺激し、神経筋接合部を通じた情報伝達をスムーズにすることで、眠っていた筋肉が再び機能し始めます。
これは従来の「筋トレで弱い部分を鍛える」という考え方とは根本的に異なります。機能低下を起こしている筋肉に無理に負荷をかけると、逆に防御反応でさらに硬直することがあるからです。神経筋整復法は、負担をかけずに「スイッチを入れ直す」施術といえます。
回復の実感とセルフケア
施術を受けた患者さんの多くは「体が軽くなった」「動きがスムーズになった」といった変化を感じられます。これは筋肉が再び協調して働き始め、血流が改善した証拠です。ただし、この状態を長く保つためには、日常でのセルフケアも欠かせません。特に有効なのがストレッチです。筋肉を伸ばして血流を促進することで、神経と筋肉の通り道を塞がないように維持できます。
大切なのは「筋トレよりストレッチ」。機能低下がある状態での筋トレは逆効果になる場合があります。まずは働ける状態に戻し、そこから運動やスポーツを楽しむことが理想的です。
まとめ ― 根本からの改善を目指す方へ
棒倒しのようにバランスを崩した体は、放置すれば悪化する一方です。しかし、神経と筋肉のつながりを回復させることで、体は本来の安定を取り戻すことができます。ひのくま整骨院では、単なる一時的な痛みの緩和ではなく、根本からの改善を重視しています。肩こりや腰痛、膝の不調にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。